【次の一手】最強の攻めを無視する驚異のノーガード戦法!
34歩と桂頭を攻めたところ、46歩から反撃された局面。33歩成から攻めていきたいが、47歩成がいかにも厳しそうだ。
攻めるか、受けるか。究極の二択を迫られた。
一番自然な同歩は同飛でさばかれる。47歩の受けには同銀成でオシマイだ。
48歩と低く受けたらどうかと思うかもしれないが、これは盤上で最も悪い手だ。丁寧に受けたつもりが、逆に大変なことになってしまう。
49角で一巻の終わりだ。
どうやら受けていてもロクなことにならないらしい。
そこで、大胆にも33歩成と攻めた。これには当然47歩成が飛んでくるのだが、、
桂得の上に玉が堅く、手番も握っていて形勢良しだ。飛車交換になった時、相手のと金だけ玉から離れていくのがポイント。この38との味が悪いと感じられる人は強い。
攻防の名角が刺さり、かなり勝ちやすい形勢だ。
【次の一手】21手先の勝利を読み切る!
48飛と角取りに飛車を打ち下ろされた局面。局面があまりにも大差なので45歩と受けるくらいでも勝ちなのだが、できればもっと気の利いた手を指したいところだ。
そこで局面を冷静に眺めてみると、敵陣の重大な欠陥に気づいた。そう、私はこの局面で早くも勝ちを読み切ってしまったのだ。
32飛〜34飛成。
銀を取りながら角を守った好手だ。しかし、このくらいの手は誰でも思いつくところ。私の真の読みはこの先にある。
33金。この両取りを待っていたのだ!
相手はこう指すより他にないだろうと踏んでいた。
どうしてわざわざ両取りを食らうような展開に持ち込んだのか。それはこのあと明らかになる。
少し進んで上図。ここでついに真の狙いが炸裂する。この手を指したいがための一連の手順だったのだ。
55桂。これで終わりだ。
「敵陣の重大な欠陥」とは、63の地点が空いていること。そして、その弱点を狙うには桂馬が必要だった。そこで32飛〜34飛成で33金打ちを誘い、桂馬を入手した。あとはその桂馬を55に打ち付ければ相手陣は受けなし。
これが74手目で私が思い描いた勝利のシナリオだ。
放置すれば63銀〜43銀と詰めろをかければ良かろう。詰みもありそうだが、自玉が堅いので慌てる必要もない。ゆっくり受けなしに追い込む方が確実でよい。
本譜は72玉と逃げてきたが、これには簡単な即詰みがある。
71角が手筋の好手。これさえわかれば難しいところはない。
最後は頭金まで。
妙手連発!五段がちょっと本気を出したら大惨事になった
この将棋は次の一手問題のオンパレードのようだった。初段程度の棋力があれば全問正解も難しくないだろうが、それを実戦で指せるかどうかはまた別の話だ。
まずは簡単な問題から行こう。相手が64歩と突いて盛り上がろうとしてきたところだが、これには手筋の反撃がある。
ここで24歩と行くのが好タイミング。単純な横歩取りの狙いがどうにも受からない。
注目すべきは横歩取りを食らわせたことではなく、横歩取りの筋を残すために飛車先の歩をあえて交換していなかったということだ。
相手の駒組みに制約を加えることで作戦勝ちを狙う、という高等戦術をこっそり展開していたのだ。こういう地味なところこそ、高段者の味だ。
早くも少しペースを握れたと感じていた。
相手が72飛と寄って、74歩〜75歩の角頭攻めを見せてきたところ。その二手が間に合うとひどいが、72飛&84銀は悪形だ。この瞬間はなにか技がかかりそうだいう直感があった。
65歩が好手。同歩には84飛と銀を素抜かれてひどいが、取れないようではきつい。仕方なく74歩と突いてきたが、64歩で厳しい取り込みが決まった。
さて、66角の銀取りに75歩と切り返してきた局面。
部分的には良い反撃だったのだが、次の一手を見落としてしまったようだ。
せっかくの拠点を成り捨てるのが好手。64歩の価値がものすごく高いだけに、少し盲点になりやすいところだったか。これで王手銀取りが決まり、勝敗が決した。
さて、あとは寄せるだけだ。63の金が悪形なのでなにか手をつくれそうな気がする。一間龍を生かす意味でも55桂は有力だが、もう少し気の利いた手はないだろうか。
「もう少し気の利いた手」。
言い換えれば、「もっと安い駒を使って攻める手」、叩きの歩だ。守りの金の頭に歩を叩く手は悪手になりにくい。
同金しかないだろうが、そこで56桂〜64歩が刺さる。悪形の金を安い駒で触って手を使っていくのがうまい。
本譜は61角!という不思議な手で応じてきたので終局が早まった。61龍と角を取りたくなるところだが、それは33玉と逃げられて長くなる。この瞬間にスパッと仕留める手はないだろうか。
最後の妙手が出る。
51角。これで決まりだ。
これで33玉とは逃げられないし、同玉も62龍で簡単な三手詰みだ。本譜は泣く泣く41玉と逃げたが、、
そこで61龍でゲームセット。後手玉は必至だ。
42金が一番難しいが、23角〜62角成で詰む。63歩でと金を取る手に対しては面白い詰みがあるので紹介しておこう。
33角。これが最も芸術的な詰みで良かろう。
さて、ここでもう一度終盤の入り口に戻ろう。
私は64歩から攻めていったのだが、改めて見ると別の指し方もあった。この将棋は敵玉を左から右へ追っていくことになるので、ここらで一旦右辺に手をつけにいくのも自然な発想だ。
22歩。基本中の基本の一手だ。
指されてみれば平凡な手なのだが、こういう手を実戦で指せる人は相当の棋力がある。
普通に進めれば上図のようになるだろうか。22歩がよく効いており、敵陣は完全崩壊だ。