角交換型石田流、数の攻めで圧勝!
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初手、金上がり。
弱点の角頭をケアする好形だが、初手で指すのは悪手というのが常識だ。
飛車先をずんずん伸ばして縦から攻めると、この金上がりが生きる形になってしまうので、、
振り飛車で横から攻める。これが定跡だ。
自分が良い手を指すのは当然大事だが、それ以上に相手の悪い手を利用するのも大事だ。
ザ・好形。
後手番でここまで組めれば勝ったようなものだ。
先手は矢倉に組んでいるが、これは初手の金上がりがいかに悪かったかを表している。
矢倉というのは、縦からの攻めに備えた城だ。振り飛車には相性が悪い。
対して、こちらの美濃囲いは横からの攻めにめっぽう強い城だ。対抗形においては最強の囲いの1つと言える。
さて、先手が54銀と上がってきた局面。
こちらの陣形は十分整っていることだし、隙ありとみて動いていった。
64の歩が浮いているのがポイント。
序盤は浮いた歩を攻めるとお得なことが多いものだ。
65銀が最強の反発だが、73歩成と最強の踏み込みで返せばよかろう。
以下、76銀 82と 77銀成 同桂で飛車銀交換の分かれ。手番こそ握られるが、囲いの差の分だけはっきり良さそうだ。
先手は穏やかに対応してきたが、66銀と上がった局面はハッキリこちらの一手得。
こちらの駒が伸び伸びしていて有利は明らかだ。
桂と銀歩の交換を果たし、ハッキリ優勢になったこの局面。「好位置で威張っている54の銀が活躍し始めれば勝利に近づきそう」というのが私の大局観だった。
その大局観に則り、「53や43の地点を薄くして銀を成り込むような展開にしよう」という方針をとることにした。
割り打ちの銀。
仮に42金右寄 32銀成 同金となれば53の地点が薄くなり、54の銀が暴れ出す展開にできる。
先手は53の地点が薄くなることを嫌ったか、32銀成に同玉と応じてきた。嫌な応手だが、玉が戦場に近づいてきたのはありがたいことだ。引き続き、方針通りの攻めを行う。
ゴリっと金打ち。
筋は悪いが、とにかく先手玉を薄くして54の銀を働かせるのがこの将棋の肝だ。
42金に同銀と取るのは、52金からさらに薄くする手があるのを嫌ったか、大将自ら危険地帯にやってきて必死の防戦を試みてきた。
しかし、もはや53はこちらのものだ。
遂に方針が成就し、54の銀が暴れる時が来たようだ。
再度の金打ちが強烈。
銀を成り込み、敵陣を一気に破壊していく。
遂に飛車まで活躍し、勝負あった。
先手は飛車に喝を入れて必死の反撃。しかし、この攻めはどうも遅すぎるようだ。
67歩成と成られたところで、私の玉は痛くも痒くも無い。それに、丁寧に同歩と応じると45角などでかえって面倒だ。
ここらがいわゆる「手抜きごろ」。
あとは寄せだけを考えて指していく。
53で遊んでいた金を活用しながら、弱点の33を狙う。
飛車の力を信じてとにかく33に殺到するのがここでの寄せの急所だ。
知性のかけらもないゴリラ攻めだが、これが一番厳しい。
数の攻めには、数の受け。
なけなしの角を手放して必死の防戦だが、大きな隙が生じてしまった。
32に殺到してバラバラにし、王手で攻め駒を一枚増やしたのが決め手。
これで完全に「潰れ」だ。
「足し算」で攻めるだけでなく、相手の受けを「引き算」することによって数的優位を得たのだ。
龍が成り込み、全ての駒を見事に捌ききった。
金合いで必死に受けるが、先手玉には詰みが生じている。
「頭金」は詰みの基本だが、その次に重要なのが「一間龍」だ。
龍が強力なので、この銀はとれない。
投了図以下は13玉に22龍まで。
終始全ての駒が効率よく働いた圧勝譜であった。