【ダメな一手】自分に両取りを食らわせる悪手とは?

 

 

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相手が歩越し飛車×端角で57の地点を狙ってきた局面。この戦法はお世辞にも優秀とは言えないのだが、級位者には人気があるようだ。そこで、今回はその潰し方を伝授しよう。

 

普通の感覚では75歩や65歩とついてみたくなるところだが、75歩には84銀、65歩には74銀と出られてまずい。また、67銀も自然なのだが、57角成で狙いにハマってしまう。

 

変態戦法に正攻法は通用しない。奇声を発して襲ってくる狂人には、こちらも奇声を発して対抗するのが吉だ。

 

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67金。見慣れない形だが、これが本筋の一着だ。狙いはすぐにわかる。

 

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5筋から盛り上がって相手の飛車角を圧迫する。これが狙いだ。次に46銀〜55歩のようになれば相手の攻めは完全に頓挫する。

 

そこで、相手は無理矢理飛車交換に持ち込んで勝負してきた。

 

 

 

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さて、ここで待望のダメな一手問題だ。

81飛と打ちおろす前に一度46銀を利かした局面。これに対しては同角と切りとばすか、24角と引いて置くかの二択というところ。私なら切り飛ばして82金のように飛車打ちの隙を消して粘るだろう。

 

しかし、相手はまさかの第三の手を指してきた。自分に両取りを食らわせたその悪手とは?

 

 

 

 

 

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69飛。これがひどい大悪手だった。高段者なら一目でこの手の酷さがわかることだろう。35銀に67飛成のような展開を想定していたのだろうが、それは勝手読みというものだ。

 

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68金。これで飛角両取りがかかった。相手はもう身動きが取れない。

 

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飛車を逃げてきたが、そこで角をタダでボロっととって勝負あり。相手のオウンゴールで突然の終局となった。

 

 

 

銀冠穴熊、相手の大悪手でいきなり必勝形に!

 

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終盤戦の難所。

駒割りは角と銀二枚の交換で駒得だが、その銀二枚が34と44に転がっている計算だ。つまり、この二枚が上手く働けば形勢がよくなると考えられる。

 

逆に相手としては1筋の飛車と馬を働かせてリードを奪いたいと思っているだろう。そして、私はそれを阻止しようとする。例えば、相手がここで73金寄などとぬるい手を指せば、、

 

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24歩。これで馬を封じ込めることができる。「成銀を使って馬を封じ込める」のは、上記の思考を踏まえれば最高の展開だ。

 

因みに23成銀も有力ながら、あまり感触が良くない。駒得の代償に自玉を荒らされてしまっているような格好なので、まずは敵の攻め駒を押さえ込んで自玉をリフォームしたいのだ。そうすれば駒得の良さだけが残るという考えだ。

 

逆に言えば、相手は24歩が来る前のこの一瞬に攻めまくるしかない。

 

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とすれば、39角くらいしかなかろう。

23飛成と飛び込むのはやはり感触が悪いので、冷静に18飛とかわしておく。

 

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66角成〜57桂成でとにかく攻めまくる。77銀とかわして受かれば良いが、67成桂と寄られて13の馬が79の金に当たってくるのが嫌味だ。

 

どうせ銀を取られるなら77より今の位置の方がパンツを脱がなくて済む分お得だ。ここでもやはり、あの手が決め手になる。

 

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とにかく馬さえ押さえ込めば怖いところがない。68成桂には同飛で相手の攻めは切れ模様だ。

 

 

 

しかし、本譜は相手の手が思わぬところに伸びた。

 

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76角成を見せて上手くもたれてきたなと思ったのだが、よくよくみるとこれは大悪手だ。

 

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86金。なんと打ったばかりの角が詰んでしまっている。しかもこの金が上部を支配するような強大な厚みを築くため、不敗の態勢になっているのだ。

 

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78の歩を取られては勝ち目なしとみたか、77香と打ち込んできた。次の79歩成を食らうと痛すぎるので、ここは丁寧に受けに回る。

 

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同桂から全部さっぱり清算してしまえばそれまで。

86の金がよく働いていて、相手は攻める場所がない。

 

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95歩とアヤをつけにきたが、平凡に同歩と取られて継続がない。とにかく金の守備力が高すぎるのだ。

 

 

 

 

 

 

【次の一手】もう飛車打ちなんて怖くない!一段金を活かした最強の受けとは?

 

 

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28飛と打たれた局面。局面は勝勢だが、29飛成から攻められると一気に怪しくなる。ここは一旦受けに回りたいところだ。

 

29飛成を防ぐ受けの好手は?

 

 

 

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39金。これが手筋の一着だ。

「一段金に飛車捨てあり」と格言で言われるように、一段金は飛車の攻めに対してかなり強い。その証拠となるのがこの39金の受けだ。

飛車は打たれてしまったものの、活躍させなければ良い。58銀は怖いが、68玉で完切れとなる。

 

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飛車を逃げるしかないが、銀を取られてゲームオーバーだ。

 

本譜は39金に黙って27飛成と逃げてきたが、

 

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28香で見事捕獲に成功。大勢は決した。

飛車を打たれた局面はピンチのように見えたが、ちゃんと受ければむしろチャンスだったのだ。

 

因みに、39金以外には38銀の受けも有力だ。

 

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これも頻出する手筋の一着で手堅いのだが、駒を一枚使うので戦力が落ちるし、飛車取りにもなっていない。本譜の39金のほうが明らかに勝るだろう。

 

とはいえ、38銀も面白い筋があるので覚えて損はない。ついでに紹介しておこう。

 

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27歩で飛車の逃げ道を断ち、、

 

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39金。これで飛車は詰んでいる。

いろいろな手筋を知っていると勝ち方のバリエーションが増えてお得だ。

 

 

この後はかなり大差になった。

 

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87銀と頭金の筋を見せてもたれてさしてきたが、、

 

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「敵の打ちたいところに打て」。

格言通りの手堅い一着で紛れがなくなった。急いで勝ちに行くより、逆転のアヤを消してゆっくり勝利を確定させるような指し回しが好みだ。

 

因みに、68玉と早逃げするような手も同様の意味で有力。敵の狙いが一つだけなので、とにかくそれを消してしまえば自然に勝ちになるという考え方だ。

 

 

 

天国から地獄へ!本気で死にたくなった悪夢の一着とは?

 

いつも通り、朝ごはんを食べながら対局を楽しんでいた。大好きな音楽を聴きながら将棋を指して頭を目覚めさせるのが朝のルーティンだ。

 

裏を返せば寝起きのボーッとした頭で指してることになる。正直、ミスは増える。さらに最近は風邪気味なうえに低気圧で、相当にだるかった。大悪手を指してしまうのも当たり前なコンディションだったのかもしれない。

 

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...醜い言い訳はこのへんにして実際の対局を見てみよう。

 

隙ありとみてすかさず45桂と跳ねたのが好手でペースを握った。現代将棋のスピード感を急速に高めたのが無謀にも見えるこの桂跳ねだ。最初に出てきたのは三浦-渡辺のA級順位戦だったように記憶している。その後、Abemaの炎の七番勝負で藤井四段が羽生さん相手に快勝し、完全に市民権を得ることになった。

 

本譜は相手の無警戒な駒組みに45桂の速攻が見事に刺さった。

 

 

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36角と飛び出して63の銀にヒモをつけてきた局面。この角をいじめてヒモを切りに行くような手が良さそうだ。

 

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47銀打ち。これなら相手は相当困っていただろう。角が逃げると63の銀をタダでとられてしまう。

同角成と切りとばすくらいだが、それでは流石にと言ったところだ。

 

この手は高段者には一目の簡単な手のはずなのだが、、

 

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ふらっと指してしまった37歩が敗着。大優勢の将棋を一手で負けにしてしまった。「角をいじめる」という意味においてはすごく良い手なのだが、この瞬間においては自陣が大変なことになっていたのだ。

 

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69飛! まさかの大頓死だ。

37歩を指した瞬間に気づいたが、時すでに遅し。一手詰めを逃すのは何年振りだろうか。私がまだ5級くらいのとき以来だと思うのだが、まさか五段で同じようなミスをおかしてしまうとは、、

 

開始早々大優勢になり、気が緩んでいたのだろう。まだ40手ということで、自玉が詰めろになっているとは露程も思っていなかったのもある。さらに、冒頭で述べたようなコンディションの問題もあった。

 

 

大悪手というのは複合的な理由によってもたらされるものだ。一生懸命分析して自分を慰めてみるが、それも虚しい。ショックがあまりにも大きすぎるのだ。

 

自戒の念を込めて記事にしたところで、あとはもうすべて忘れてしまおう、、

 

 

【次の一手】攻めの速度を逆転させる驚愕の金捨て!

 

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35成銀〜24成銀(or 24香)と指せれば敵玉は寄り。しかし、このままでは39角と打たれて一気に自玉が詰まされてしまう。

 

一旦受けてから攻めることになるが、どの受けが一番良いだろうか。

 

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79金!がとられそうな金を活用した絶妙手。厳密には最善手かどうかはわからないが、実戦的にはインパクト大で気分の良い手だ。相手としては上手い手を指されてしまったという気持ちでいっぱいだっただろう。

 

この金は流石にとるしかないが、同とは89角、同龍は同飛があっていずれにしても龍を盤面から消せる。相手の最強の攻め駒がいなくなった瞬間に35成銀から寄せに行けば一手勝ちの形勢だ。

 

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最後は一方的に攻める展開になり、大差の勝ちとなった。